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これまでの演奏会の紹介です。

チェロと鍵盤楽器(オルガン・チェンバロ)による

J.S.バッハの夕べ

Photo

◆日時

 1995年10月27日(金)7:00pm

 

◆場所

 奈良カトリック教会   奈良市登大路町36ー1  Tel.(0742)26-2094

 

第26回奈良県民芸術文化祭参加

音楽家ユニオン助成公演

 

◆演奏者

 チェロ         大木 愛一

 オルガン・チェンバロ  高田 富美

 

チラシ

◆プログラム

 

Johann Sebastian Bach(1685-1750)

J.S.バッハ

 

 "Das Wohltemperierte Klavier TeilT" Praludium und Fuga C-dur BWV846

 「平均律クラヴィーア曲集 第1巻」より 前奏曲とフーガ ハ長調 BWV846

 Sonata fuer Viola da gamba U D-dur BWV1028

 ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ 第2番 二長調 BWV1028

  Adagio − Allegro − Andante − Allegro

 

 Toccate D-dur BWV912

 トッカータ ニ長調 BWV912

 

 Suite fur Violoncello solo Nr.1 G-dur BWV1007

 無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007

  Prelude − Allemande − Courante − Sarabande − Menuet I/II − Gigue

 

 Partite diverse sopra il Chorale "Christ, der du bist der helle Tag" BWV766

 コラール「汝明るき日なる、キリストよ」によるパルティータ BWV766

 

 Sonata fuer Viola da gamba T G-dur BWV1027

 ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ 第1番 ト長調 BWV1027

   Adagio − Allegro ma non tanto − Andante − Allegro moderato

 

 

◆プロフィール

大木 愛一/チェロ

東京芸術大学音楽学部器楽科チェロ専攻卒業。阿部健、松下修也、堀江泰氏、各氏に師

事。芸大在学中、通奏低音・アンサンブル等に小林道夫氏の薫陶を受ける。1988〜

89年ハンガリー政府の奨学金に基づき、文部省在外研究員としてブダペストに学び、

ペレーニ・ミクローシュ氏の音楽と指導に接する。現在、大阪教育大学助教授。

 

高田 富美/オルガン・チェンバロ

相愛女子大学音楽学部器楽科オルガン専攻卒業。その後、ドイツ・ヴェストファーレン

州立教会音楽学校に留学。チェンバロを長瀬節子氏に師事。現在、オルガンとその他の

楽器による演奏会を「音楽の散歩道」シリーズで企画している他、独奏、室内楽等の演

奏活動を行っている。

 

◆解説

 

 J.S.バッハは、彼の深い信仰と教会音楽家という職業から数多くの宗教曲を作曲

し、宮廷楽長時代には室内・管弦楽曲を生み出し、又熱心な教育者としての立場より器

楽曲を作るというように、彼の生きた時代とその環境の中で、必要な音楽を作り出して

いきました。しかし、今彼の音楽は宗教的・芸術的といったものを越えたところで何か

大きな力を持って人の心にうったえかけてきます。それは何なのでしょう?

 平均律第1巻第1番ハ長調の前奏曲は、後にグノーが「アベ・マリア」として上声部

にメロディーを作曲し有名になった曲です。

 多楽章からなる鍵盤楽器のためのトッカータをバッハは7曲作っていますが、ニ長調

のトッカータは彼の30才前半に作曲されたエネルギッシュで生命の息吹きを感じさせ

る曲です。

 コラール「汝明るき日なるキリストよ」によるパルティータは、中世に作られた夕べ

の賛歌「Christe qui es lux et dies(ラテン語)主にして日なるキリストよ」の詩節

をドイツ語訳したもので、バッハは7つの詩節を7つの変奏に対応させて作曲していま

す。

                               高田 富美

 

 

バッハの、チェロとヴィオラ・ダ・ガンバの使い分け

 

 バロック音楽の時代に用いられた、中低音を担当する弦楽器として、ヴィオラ・ダ・

ガンバとチェロの2種類の楽器があります。

 ヴァイオリンに対しては、無伴奏ソナタ・パルティータと、チェンバロとの2重奏ソ

ナタ(3声部)を作曲しているバッハですが、中低音弦楽器に対しては、無伴奏組曲は

チェロのために、そして2重奏ソナタはガンバのためと書き分けています。

 バッハによるこのようなチェロとガンバの使い分けは、実は独奏曲に限った話ではあ

りません。彼が生涯を通して書き続けた教会音楽の中でも同様の使い分けが見られます

 カンタータを構成する様々な編成の曲のなかに、「コンティヌオ・アリア」と呼んで

いるスタイルのものがあります。声楽のソリストを、コンティヌオ(通奏低音−オルガ

ンまたはチェンバロとチェロ、ときにヴィオローネ)のみで支える、最小編成のアリア

ですが、バッハはこの低音パートに対し、他の作曲家には例を見ない豊富な表現力を与

えています。和声進行の支えのポイントは押さえながら、リズムにも音程進行にも最大

限に個性を主張します。

 一方、ガンバをオブリガートのソロ楽器として用いたアリアとしては、「ヨハネ」「

マタイ」両受難曲にそれぞれ一曲ずつ、それも、最も重要な位置に置かれています。ど

ちらも、イエスの死を目前に、その悲しみを浄化し、救いに転換する為の心理的な役割

を担っています。

 バッハが、無伴奏チェロ組曲や、ガンバ・ソナタを作曲したのは、30代のケーテン

の宮廷楽長時代のようですので、直接教会音楽との関連に言及する事には無理があるで

しょうが、例えばカンタータの中の合唱曲にも、チェロ組曲の中の楽章と共通する音の

世界を感じる事があります。

 

[曲目について]

 6曲のチェロ組曲には、それぞれ、人生の異なるステージにおける魂の状況が託され

ているように感じます。第一番の組曲は、シリーズの開始にふさわしく、いわば、青春

の旅立ちといった気分に満たされています。

 3曲のガンバ・ソナタも、同時期に作曲されているのです、やはり一曲ごとに世界が

異なります。

 第一番は、バロックの伝統的トリオ・ソナタの形式を、鍵盤の両声部とガンバに振り

分けています。ゆえに、他の編成に置き換えることも容易です。

 第二番は、より楽器自体のもつ表現の個性を重視しています。第3楽章は、受難曲の

アリアに通じる世界をもっていますし、終楽章ではソリスティックなパッセージも登場

します。

 (本日は、ガンバ・ソナタもチェロで演奏します。)

                                大木 愛一

 

 

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