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これまでの演奏会の紹介です。

古きヨーロッパの風に寄せて

リコーダー、ヴィオラ・ダ・ガンバと

オルガンによるサマーコンサート

Photo-1_1998/7/11リハーサルより

199807pf.jpg (30618 バイト)

日時

1998年7月11日(土) 7:00pm

場所

音楽の友ホール・新大阪

Tel.(06)397-0333

新大阪駅より徒歩7分 SORA新大阪21 1F

演奏者

リコーダー 中村 洋彦

ヴィオラ・ダ・ガンバ 坂本 利文

オルガン 高田 富美

 

プログラム

Giovanni Battista Fontana ( ? -1631?) / G.B.フォンタナ

Sonata decima (X) / ソナタ 10番

Girolamo dalla Casa (1543?-1601) / G.ダッラ・カーザ

Ben qui si mostra'l ciel / 青空がかおをみせる時

Giovanni Paolo Cima (c.1570 - ? ) / G.P.チーマ

Sonate in d / ソナタ ニ調

Cipriano de Rore(1516-1565)/Giovanni Battista Spadi (fl.early 17C )

/C.デ.ローレ/ G.B.スパーディ

Ancor che col partire / 別れの時

Girolamo Frescobaldi (1583-1643) / G.フレスコバルディ

Aria detta la Frescobalda / アリア「ラ・フレスコバルダ」

Bartolomeo de Selma (fl.early 17C) / B.デ・セルマ

Canzon a2 / カンツォーン

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Johann Sebastian Bach (1685-1750) / J.S.バッハ

Sonata fuer Viola da gamba Nr.1 G-dur BWV1027
ヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ第1番 ト長調 BWV1027

Arcangelo Corelli (1653-1713) / A.コレルリ

Sonata g-moll fuer Altblockfloete und Basso Continuo Op.5 Nr.8
アルトリコーダーと通奏低音のためのソナタ ト短調

Johann Sebastian Bach (1685-1750) / J.S.バッハ

Sonata X F-dur BWV529 (Aus der Sechs Orgel Sonaten
ソナタ第5番 へ長調 (6曲のオルガンソナタより)
[ヴァルトラウト・キルヒナー、ゲールハルト・キルヒナー編曲]

Photo-2_1998/7/11

解説

バロック幕開けの音楽と日本の使節団のこと

中村 洋彦

音楽史の上では、1600年という年をもってバロック時代のはじまりとしていることは、今やヨーロッパの古い時代の音楽(いわゆる古楽)を愛好する人たちには、よく知られたところとなっています。その理由として、ちょうどこの年にイタリアのフィレンツェで、現存する最古の「オペラ」なる劇音楽が作曲され、上演されたこと、また、ローマで同じ年、初めての「オラトリオ」が作曲され、世俗と宗教の分野での2大楽曲がこの1600年という年に世に現れたことが、その大きな決め手となっているようです。16世紀の後半、イタリアの各地では音楽の上での様々な試みがなされ、それまでのルネサンスの音楽とは違った語法の音楽が生まれつつありましたが、特にヴェネツィアでは、そうした動きをいち早くつかんでいました。ヴェネツィアの中心には聖マルコ聖堂があり、その特有な構造(聖堂の両翼にそれぞれ聖歌隊席とオルガンが設置されている)から生み出された多重合唱の様式、また器楽合奏曲など、バロックの時代に向かう要因がすでにこの時期にあったのです。
1585年という年に、一つの興味深い出来事がありました。それは、当時日本から派遣された4人の使節団(天正遣欧使節)が、このヴェネツィアに滞在していたのです。彼らはローマ教皇に謁見するといった大役を終え、その後イタリア各地を訪れ、イエズス会の教会や、また諸公の宮殿などで様々な芸術に接していましたが、ここヴェネツィアでも例外ではありませんでした。聖マルコの祝日には大聖堂でのミサにあずかり、荘厳な16声の合唱曲、そして、当時の第一級の音楽家たちの器楽の演奏を聞き、まさにルネサンスからバロックへと移行していく新しい響きを直に感じ取ったのです(使節の4人はそれぞれ音楽的な素養もあり、記録の中にもしばしばそのことが記されている)。
彼らが訪れた当時の聖マルコ大聖堂の音楽家たちには、楽長のジョゼッフォ・ツァルリーノ(前楽長はチプリアーノ・デ・ローレ)、オルガニストにアンドレア・ガブリエリとジョヴァンニ・ガブリエリ、そして器楽合奏長には、ジロラモ・ダラ・カーザたちがいました。
また、同じ時期ミラノでも、独自の音楽が展開されていました(主に器楽の面において)。ミラノで活躍していた、ヴァイオリン、その他の器楽奏者の技術は当時、極めて高いもので、その演奏はイタリア国外まで知られていました。また作曲面においても、カンツォーナなどの新しい器楽曲を次々に生み出していきました。こうした音楽家の中には、一族で活躍したものが多く、ロニョーニ一族、少し後には、チーマ一族らがいます。チーマ一族で特に有名だったのは、ジョヴァンニ・パオロ・チーマで、彼が作曲したソナタは、ソナタの中でも最も古いものの一つとして知られています。
尚、前述の日本の使節たちは、同じ年(1585年)にこのミラノにも訪れ、ミラノ総督付きの音楽家たちのすばらしい演奏を聞いたことが伝えられています。

 

イタリアに於けるヴィオラ・ダ・ガンバ音楽

坂本 利文

ヴィオラ・ダ・ガンバ(脚のヴィオラ)、とイタリア語で呼ばれる理由は、この楽器がルネサンス時代の初期(15世紀末から16世紀の初頭)に、スペインからイタリアに移入され、その地で楽器として完成され、広まって行ったからである。S・ガナッシが、1542〜3年に音楽史上最初のガンバ教本である『レゴーラ・ルベルティナ』をヴェネチアで、またD・オルティスが、1553年に『ヴィオラ・ダ・ガンバの為の変法』の本をローマで出版しているのをみても、16世紀の前半にイタリアで、ガンバ が愛好されていた事がうかがえる。しかしこれ以後のイタリアでは、バロック時代の後期に至るまで、純粋のガンバ音楽は創られていない。只、ヴィオラ・ダ・ガンバの一種であるヴィオラ・バスタルダの為に、16世紀の後半から17世紀の初めにかけて創られた音楽はガンバのレパートリーに加える事が可能である。
バスタルダとは文字通り訳せば『私生児』とか『ごちゃまぜの』と言う意味のイタリア語であるが、この場合は、原曲になる4声部のシャンソンやマドリガル等の全ての声部に渉って、行つ戻りつ変奏を加え、また時には第5の声部を創って パッセージをつないで行く作曲、演奏様式の事である。そしてそれを演奏する為に作られた楽器が、ヴィオラ・バスタルダと言う訳である。ヴィオラ・バスタルダはテナー・ガンバとバス・ガンバの中間位の大きさで、調弦法も一般的にはバス・ガンバと同じであった。
G・ダッラ・カーザは、1584年に初めてヴィオラ・バスタルダの為の曲集を出版したが、『青空が顔を見せる時』はその中に含まれている。
なおG・B・フォンタナのソナタやB・デ・セルマのカンツォンのバスパートは、本来ファゴットやチェロを想定して作曲されているが、ガンバが除外されていた訳ではないので、本日のプログラムに加えた。

 

バロック時代のソナタについて

高田 富美

ソナタという言葉は、イタリア語のソナーレ(sonare動詞、鳴り響く、演奏する)の過去分詞の女性形で、音楽用語として用いられた記録は13世紀にまでさかのぼります。初期バロック(17世紀半ばまで)のソナタは北イタリアの諸都市で多く作曲され、今日の前半のプログラムにあるG.P.チーマG.B.フォンタナのソナタのように、数個の部分からなる1楽章形式で楽器編成は多種多様でした。
時代が進むにつれ、音楽は教会旋法から長・短調が確立され、リズムやテンポの対照もはっきりとなり、声楽を起源とするゆるやかな楽章と、急速な楽章をもつ「教会ソナタ」と、器楽による舞踏音楽の系統である「室内ソナタ」が成立します。今日演奏するA.コレルリのソナタはヴァイオリンのための作品であり、古典組曲の形式をもつ「室内ソナタ」です。
J.S.バッハにおいては、彼の多くの分野の音楽と同様に、先人達の業績を基礎として、いろいろな楽器のためのソナタがバッハ独自の世界で芸術的に高められています。

 

プロフィール

中村 洋彦/リコーダー

エリザベト音楽大学宗教音楽学科卒。第4回全日本リコーダーコンクールにおいて最優秀賞を受賞。1981年、82年、84年に渡欧、研鑚を積む。1987年第1回リコーダーリサイタルの成果に対して大阪文化祭奨励賞を受賞。リコーダーを花岡和生、フラウト・トラヴェルソを有田正広の各氏に師事。1993年より『笛の楽園』と題してリサイタルを開催。現在、相愛大学非常勤講師、セミナリオ・コンソート主宰、ダンスリー・ルネサンス合奏団所属。神戸音楽家協会会員。

坂本 利文/ヴィオラ・ダ・ガンバ

東京尚美音楽院ギター科卒。1974年ダンスリールネサンス合奏団に入団。1981年-1983年ベルギーのブリュッセル王立音楽院に留学。ガンバをW.クイケン氏に師事。室内楽をD.フェールト氏に学ぶ。1986年ー1989年スウェーデンの公立古楽合奏団“ユースタッツ・ビーバレ”に所属しスウェーデン、デンマーク、ポーランド等で演奏活動を行う。1990年オルティスコンソートを創設、現在まで9回の定期コンサートを含む活動を行う。1993年SAKAMOTOファミリーコンソートでの活動を開始。現在、大阪音楽大学・相愛大学音楽学部古楽科非常勤講師。オルティスコンソート主宰。ダンスリールネサンス合奏団メンバー。

高田 富美/オルガン

相愛女子大学音楽学部オルガン専攻卒業。その後、ドイツ・ヴェストファーレン州立教会音楽学校に留学。チェンバロを長瀬節子氏に師事。現在、オルガンとその他の楽器による演奏会を「音楽の散歩道」シリーズで企画している他、独奏、室内楽・合唱などとの共演等、演奏活動をしている。

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