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大阪第三学科たより
2007年

2007年12月21日号
2007年12月7日号
2007年11月23日号
2007年11月2日号:〔1〕
2007年11月2日号:〔2〕
2007年10月19日号
2007年10月5日号
2007年9月21日号
2007年9月7日号
2007年7月20日号
2007年7月6日号
2007年6月22日号
2007年6月8日号
2007年5月25日号
2007年5月11日号
2007年4月20日号
2007年4月6日号
2007年3月23日号
2007年3月9日号
2007年2月23日
2007年2月9日号
2007年1月19日号
2007年1月5日号


2007年12月21日号

とうとう今年も最後のたよりとなりました。「偽」の文字が選ばれる年。しかしそれは発覚しただけで、その前から偽は続いていた、偽装・・も。

[第541回ゼミ報告]
12月12日のゼミは、マルクス『資本論』3巻第7篇「諸収入とその源泉」第48章「三位一体的定式」、第49章「生産過程によせて」をとりあげ、すでに10月と11月に二つの章は報告がされていて、討論もおこなったが、まだまだ検討が足りないということで、二つの章について再討論を行ないました。資本論の3巻を通して最後の部分にあたり、最初は商品論とその物神性ではじまり、剰余労働が三位一体として収入の形で締めくくられている。その流れの中に物神性としての論理の一貫性をみることができる。物神性が最高度になれば、現象として収入の形で全てがみえてしまう。必然と自由の問題について、必然の王国を物質的生産の範囲として考え、物神性の克服によって、真の自由の王国へと進むという。しかしどこからが真の自由の王国であって、どこまでが必然の王国であるのか、はっきりしない。それについて、不破哲三氏は必然の王国と自由の王国は断絶ではなく同時に起こるものだという。必然は基礎的部分であり、自由は上部構造であるという。物質的生産の部分では必然の王国が続くということだ。杉原四郎氏は必然との戦いはそのまま続くといっている。初期マルクスの問題に立ち返っていくようである。労働と物神性の問題。欲求と必要に応じて受け取る、という議論とのかかわりが問題でなる。生産力の発展は超歴史的ではあるが、生産関係の問題としてどのように捉えるか。喜びの労働は必然の王国のものか、自由の王国のものなのか。一部の人に富が集まる状態ではどうなのか。自然との格闘はどの社会形態でも起こりえるものではないか。それでは階級の問題をそこではどのように関係しているのか。朝・昼に働き、夜に芸術をするということではなく、ひとりの人が芸術だけを一日中やる人がいてもいいのではないか。労働に応じて、必要に応じて、とは物欲からではない。未来社会とは市場経済ではなくなることか。交換と商品・市場との関連。分配論がそこで問題となってくる。現代においては自然の限度・環境問題まで出てくる。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*次回12月26日は12日と入れ替えて現代ものテキストです。
*次回のテキストは、大谷禎之介編『21世紀のマルクス 資本システム批判の方法と理論』桜井書店5200円です。本の中から適宜に章を選んで行ないます。次回は第10章大谷禎之介論文です。

****** ゼミ日程 *******
12月26日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
『21世紀のマルクス』第10章「賃労働からアソシエ・」

1月9日(水)午後6時半〜9時   天六・大阪市立住まい情報センター
『21世紀のマルクス』のいずれかの章     

1月23日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第50章「競争の外観」 

その後は 2/13(天六)、2/27(天六)、3/12(場所未定)


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2007年12月7日号

合宿の最寄駅、加茂駅は近代的な駅に生まれ変わり、駅前に高層マンションが建つ。小学生の頃、汽車から見た風景ははるか昔になってしまった。

[第540回ゼミ報告]
11月28日のゼミはマルクス『資本論』3巻第49章「生産過程の分析によせて」を行ないました。利潤(企業者利得+利子)と地代は剰余価値の特殊な形態で、実現された剰余価値全体に等しく、労賃は生きた労働の購入に等しい。それでは生産物に含まれる不変の価値部分をだれが、何で払うのか?生産において吸収された不変資本の価値が生産物の価値部分として再現される。新たな労働の追加によって追加価値を創造し、旧価値を保持する。「労賃+利潤+地代」はAスミス以来経済学の分析の誤りに結びつく。不変資本を形成する部分は素材的に個人消費に入り込めない。両部門間で、消費されないTの収入部分がUの不変資本部分として消費される。商品の価値は労賃+利潤+地代に分解できるという誤ったドクマに入り込む。商品の全ての価値が収入から発生するという観念へ入り込む。資本主義的に組織された国家を国民的欲望の充足のために労働する全体とみなすのは、誤った抽象である。資本主義的生産様式の止揚後も価値の規定、労働時間の規定、社会的労働の配分、簿記はいっそう不可欠なものになる。
討論では、資本主義止揚後の経済における価値規定の問題、個人的欲望と調整、自動化機械と労働、地球的規模と国民経済との関連に集中した。空想的科学主義というがそれを発展させたところに科学的社会主義がある。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*12月12日は資本論の3巻48・49章をもう一度議論し、12月26日は『21世紀のマルクス』というように、入れ替えます。
*現代物の新しいテキストは、大谷禎之介編『21世紀のマルクス 資本システム批判の方法と理論』桜井書店5200円に決まりました。本の中から適宜に章を選んで行ないます。最初は第10章大谷禎之介論文です。
*『格差社会の構造』の合宿合評会を、11月24・25日に関西大学恭仁山荘で、2日間で全ての章を評価検討しあい、木々に囲まれ、太い梁と大きな木のテーブルのもとで、今後の研究方向まで議論を進め、有意義な2日間を過ごしました。また、基礎研から11月16日に出版補助金10万円をいただきました。

****** ゼミ日程 *******
12月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第48章、49章 再討論 

12月26日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
『21世紀のマルクス』第10章大谷禎之介論文 

1月9日(水)午後6時半〜9時   天六・大阪市立住まい情報センター
『21世紀のマルクス』のいずれかの章      

その後は 1/23(天六)、2/13(天六)、2/27(天六)

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2007年11月23日号

偽装請負から偽装表示へ、労働市場の流動化が労働者に企業に対する忠誠心をなくし、内部告発を促し、様々な企業の逸脱行為を明らかにしていく。

[第539回ゼミ報告]
11月14日のゼミは協同総合研究所「イタリア社会的協同組合調査報告」の田中夏子「イタリア社会的協同組合の形成過程と現況、課題 −市場の再構築の担い手となる協同側の取り組みとは−」を行ないました。イタリアの社会的協同組合は、「生きにくさ」や社会的排除の克服をめざす協同組合として生まれ、「新しい貧困問題」への対応として法制化された。それは州政府レベルにおける制度的認知であった。サービス提供でのA型と、労働参加の促進でのB型に分けられるが、両者の混合型が多数ある。精神障害者、知覚・身体・知的障害の人々、高齢者、社会的マイノリティが「生きにくさ」の対象領域であり、協同組合運動と地域社会と市民運動との出会いの場である。1991年の法制化以後の市場との相互関係の深まりと運動がどのように工夫されてきたのか。就労支援の展開での経済的効果を提示することの危惧はあるが、仕事を人に合わせるという人間発達に寄り添った仕事おこしが協同組合らしい労働市場への介入となる。それは「市場の論理」に適合的な発想や提起と、「市場の論理」に変更を迫る働きの、両方を含む。すなわち、「市場的発想」への「適応」と「市場的発想」への「社会的介入」との両ベクトルのアクションをとり、「非営利陣営」からの「市場の再構築」をせまるのである。事業組織としての協同組合と運動組織としてのアソシエーションとの相乗的な展開が、運動的側面の強化と市場に対する影響力を加ええる。
討論では、「市場の論理」に歩み寄るとしたことで、それで協同組合の主旨をなしうることはできるのだろうか。コミュニケーションはでているが、そこに仕事の熟練の問題、訓練の中身がかかれていない。イタリアでの社会的サービスには、工場協議会や人民の家の礎があって出てきている。市民運動と労働運動との関連がよく分からない。社会的な救済と労働参加がうまくよく関係しあっている。91年の法制化はソ連崩壊の年と同じである。日本の企業における障害者雇用の問題について労働組合はどのように取り組んでいるのか。

*次回の会場は関目・城北学習センターです。お間違いのないように。
*「イタリア社会的協同組合調査報告」は今回で終了し、次の新しいテキストを次回ゼミで選びます。候補のテキストをお持ちより下さい。
*『格差社会の構造』の合宿合評会(11月24・25日、関西大学恭仁山荘)の参加予定者は11名です。加茂駅に午後1時に集合です。

****** ゼミ日程 *******
11月28日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第49章 生産過程の分析によせて

12月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
テキスト未定                     

12月26日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第49章続き あるいは50章 

その後は 1/9(天六)、1/23(天六)、2/13、2/27

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2007年11月2日号:〔1〕

[第538回ゼミ報告]
10月24日のゼミは『資本論』第3巻48章「三位一体的定式」を行いました 資本主義社会は資本が労働者から剰余価値をくみ出し、その一部を土地所有者が地代として取る。それが現象面では資本家にとって資本が利潤を、土地が所有者に地代を、労働が労働者に労賃をそれぞれもたらすように見え、日常の観念に囚われた俗流経済学の立場、資本−利潤、土地−地代、労働−労賃という「三位一体的定式」となる。本章では、この転倒の秘密が暴かれていく。定式では価値の源泉は何か、それが生み出される仕組みが見えず、資本主義社会が一定の歴史的社会的形態であることが見失われる。続いて、第1部、第2部、第3部の議論を振り返りながら、こうした転倒を生み出す資本主義的生産は神秘化の発展として理解され、神秘化の完成がこの「定式」なのである。「剰余労働」論の箇所では人間社会一般の存立条件としてその意義が云われ、資本主義の歴史的役割を資本の文明化側面として指摘し、未来社会は物質的生産において「必然性の国」「自由の国」として展開される。
議論では、俗流経済学の位置づけ、古典派経済学、新古典派経済学、今日の「価値論抜きの近代経済学」等の流れに触れ、現象面にとどまっており、本質と現象が一致すれば科学はいらないマルクスの立場が指摘された。未来社会論では、大谷禎之介氏等の、最近の「アソシエーション論」が話題になる。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*次回のテキストは「イタリア社会的協同組合調査報告」協同総合研究所
*『格差社会の構造』が「日本図書館協会推薦図書」に選定されました。
森岡先生はじめ執筆の皆さん、とりわけ出版の桜井さんに感謝。
*『格差社会の構造』の合宿合評会を11月24・25日、関西大学恭仁山荘にておこないます。10名の参加予定。詳細は決定後連絡します。

****** ゼミ日程 *******
11月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
「イタリア社会的協同組合調査報告」田中夏子論文 

11月28日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第49章 生産過程の分析によせて 

12月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
「イタリア社会的協同組合調査報告」あるいは次のテキスト 

その後は 12/26(天六)、1/9(天六)、1/23(天六)

※10月24日のゼミを欠席するので、「便り」の原稿をゼミで声を大にしてお願いしたところ、思いもかけず小野さんと川口さんのお二人からいただきました。どちらもまとめが捨てがたく、フランス語版ではないですが、2通送ります。ありがとうございます。
10月18日から30日までドイツを旅してきました。16年ぶりの東側の都市では市電もバスも乗用車も西側と同じものが走り、懐かしいトラバントを見たのは、エアフルトの街角で煙を出して横切った1台だけでした。

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2007年11月2日号:〔2〕

[第538回ゼミ報告]
10月24日のゼミは「資本論」第3巻第48章三位一体的定式を行いました この第48章のエンゲルスの編集については一部に誤りがあるというのが定説のようで川口さんの報告もリュベールの説にしたがって行われた。「三位一体的関係」はスコラ学者が神−父、神−子、神−聖霊において感じる安らぎを、俗流経済学者は土地−地代、資本−利子、労働−労賃において感じることを指している。資本主義的生産関係においては資本が剰余労働をくみ出す。その中から土地所有は地代を横取りするのであり、残りが利潤として資本家間で平均化されその一部は利子として貨幣資本家の手に渡る。これに対して労賃は労働の生みだしたものの一部−必要労働にすぎない。ところが諸商品が流通過程で実現され、それも現実の競争の偶然性のなかで実現されることになると、剰余価値も単に流通において実現するだけのようには見えず、流通から発生するように見え、現象的には、資本家、土地所有者、労働者の収入はそれぞれ資本、土地、労働から生まれるように見える。しかしこれでは@相互の間に類似点がないA価値の源泉が見えなくなるB資本主義的生産様式が「一定の独特な社会的形態」であることが見失われる。労働に価値の源泉であることを見いだしたのは古典派経済学の功績であるが、俗流経済学は「日常的諸観念」を記述しているにすぎない。剰余労働一般は人間社会一般の共通の存立条件であり、@非常時のための予備ファンドA生産拡大の蓄積ファンド{他にB直接生産者以外の消費ファンドC社会的に行われる非生産的消費(公共施設など)ー大谷禎之介}。剰余価値の増大によって「急迫と外的な目的への適合性によって規定される労働」「必然性の国」に従事する時間を短縮し、「物質的生産の領域の彼岸」に「自由の国」をつくりだす。議論としては、俗流(近代)経済学の方がわかりやすい。それは俗流だから現象記述だからわかりやすいのだ。天動説が一見わかりやすいのといっしょだ。現象から本質へ考察を進めるのが正しい。 現在の市場経済から未来社会にどう進むか。アソシェーション論・協同組合論があるがどう違うのか。株式会社は共同化した資本家だという意見もある。人間の協働には自由な連合と強制された結合とがある。人間の協働のあり方が重要。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*次回のテキストは「イタリア社会的協同組合調査報告」協同総合研究所
*『格差社会の構造』が「日本図書館協会推薦図書」に選定されました。
森岡先生はじめ執筆の皆さん、とりわけ出版の桜井さんに感謝。
*『格差社会の構造』の合宿合評会を11月24・25日、関西大学恭仁山荘にておこないます。10名の参加予定。詳細は決定後連絡します。

****** ゼミ日程 *******
11月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
「イタリア社会的協同組合調査報告」田中夏子論文 

11月28日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第49章 生産過程の分析によせて 

12月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
「イタリア社会的協同組合調査報告」あるいは次のテキスト 

その後は 12/26(天六)、1/9(天六)、1/23(天六)

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2007年10月19日号

弱いのか強いのか、最後まで楽しましてくれた今年の阪神、最後に完敗。

[第537回ゼミ報告]
10月10日のゼミは二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』第6章「男女平等の経済学と史的唯物論」を行ないました。資本主義のもとでの「近代家父長制」の物質的基盤の存否をめぐって、竹中恵美子説ではその成立基盤・土台が明らかにされていない。「労働力商品化体制」での賃労働者家族と近代家父長制家族を同一視しながら、資本主義が近代家父長制家族を突き崩す傾向を認めている。性支配からの脱却の課題は資本制社会システムの改革の中心課題という。家事労働を無償労働として感情労働としてつかむことは正確にはコミュニケーション労働として議論すべき。青柳和身説は二元的史的唯物論とは物質的な生産様式からだけでなく、性=生殖様式としての生産様式から近代家父長制家族を説明しようとする。しかし史的唯物論の見地から性=生殖関係は社会的意識形態を構成するコミュニケーション関係として捉えなければならない。最後にジェンダーエクィティ視点に立つ新福祉国家について、労働者家族そのものを発展的にとらえて、その可能性に福祉国家を位置づける。さらに男女平等の賃金のあり方、家事労働の社会化とその商品・市場化との対抗関係を論じ、現代福祉国家での所得保障・社会サービス保障・生存権保障にまで進む。
討論では、前近代的家族・伝統的家族と近代家父長制、近代的家族、賃労働者家族をどのように規定するかが問題、イエ制度の問題、家父長制とは男の支配。資本主義そのものの問題と日本の特殊な問題が同じ次元で述べられている。社会主義がでてこない。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』が10月10日のゼミで終わりました。次のテキストは「イタリア社会的協同組合調査報告」協同総合研究所2006年増補版に決まり、まとめて取り寄せています。24日配布。
*『格差社会の構造−グローバル資本主義の断層』の出版打上会を10月8日夕刻に北新地「阿もちん」で行ないました。出版でお世話になった桜井さんが東京から参加してくださり、本が出るまでのいろいろな興味深い話を中心に歓談しました。
*『格差社会の構造−グローバル資本主義の断層』の合宿合評会を11月終りに行ないます。次回ゼミで日程を決めます。関大恭仁山荘予定

****** ゼミ日程 *******
10月24日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第48章 三位一体的定式  

11月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
「イタリア社会的協同組合調査報告」         

11月28日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第49章 生産過程の分析によせて

12月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
「イタリア社会的協同組合調査報告」あるいは次のテキスト

その後は 12/26(天六)、1/9(天六)

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2007年10月5日号

8月22日研究大会の会場へ。書籍売り場に積み上げられた我らが本に初対面。最後まで手を煩わした森岡先生、高橋さん、出版社の桜井さんに感謝。

[第536回ゼミ報告]
9月26日のゼミはマルクス『資本論』3巻第47章「資本主義的地代の創世記」の第5節「分益経営と農民的分割地所有」を行ないました。地代の形態:労働地代、生産物地代、貨幣地代はいずれも直接土地所有者に渡る。地代の本源的形態から資本主義的地代への過渡形態が分益制度または刈り分け小作制度である。完全な資本主義的経営を行なうには借地農場経営者には十分な資本がなく、土地所有者が受け取る分け前は純粋な地代形態をとっていない。分割地所有では農民は土地の自由な所有者であり、地代は農民に帰属する超過利潤として現れる。しかし分割地所有は労働の社会的生産諸力の発展、社会的諸形態、資本の社会的集中、大規模な牧畜、科学の累進的応用を排除する。小土地所有にたいする批判は農業にとって制限であり障害である私的所有にたいする批判に帰着し、大土地所有への反論的批判ともなる。それは人口のはるかに圧倒的な多数が農村人口であり、社会的労働ではなく孤立した労働が優勢であるが、他方で、大土地所有は農業人口をますます減少させて最低限度にまで縮小させ、諸大都市に密集し増大する工業人口を対置する。大工業は労働力、人間の自然力を荒廃させるが、大農業は土地の自然力を荒廃させ、その後の進展で両者は手を結ぶ。
討論では、資本主義発展の2つの道:アメリカ的とプロイセン的発展に関して過渡期をどのように理解するかが問題。資本主義的地代に関して、それまでの剰余生産物は地代が主たる形態であったが、資本主義により地代が主要な形態から外れた。

*次回の会場は関目・城北学習センターです。お間違えのないよう。
*二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』は次回10月10日のゼミで終わります。次のテキスト候補を持ち寄り下さい。協同組合論をという声もあり。
*森岡孝二編『格差社会の構造−グローバル資本主義の断層』桜井書店
9月28日出版されました。装本のすばらしさに感激。
*上記出版の打上会を10月8日「阿もちん」で行ないます。2004年7月31日、森岡先生の還暦祝いで出版プロジェクトを立ち上げた場所で。

****** ゼミ日程 *******
10月10日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』6章 男女平等の・・

10月24日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第48章 三位一体的定式    

11月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
テキスト未定              

11月28日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第49章 生産過程の分析によせて

その後は 12/12(天六)、12/26(天六)

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2007年9月21日号

暑い秋の始まり。世界の金融市場を混乱させたサブプライムローン。アメリカが金利を下げれば、日本の金利が上がる。日本市場の脆弱性なり。

[第535回ゼミ報告]
9月12日のゼミは二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』第5章「ジェンダー視点の社会政策と資本主義の解剖」を行ないました。「強力な企業社会プラス未熟な福祉国家」は福祉制度にジェンダーバイアスを刻印している。近代的家父長制の概念はきわめてあいまいな概念であり、何を物質的基礎にしているかあきらかでない。資本主義の特質は労働力の商品化にあり、人格上は自由・独立の主体であり、家族領域は資本から相対的独立している。資本は形式上家族関係・両性関係には無関心・無頓着であるが、伝統的家父長制をそのままに、家父による妻子販売を受け入れる。形式的自由・平等は実質的不自由・不平等を起こすが、資本には解決能力はなく、労働者階級の発達と運動が必要である。資本主義の支配・差別は両性間にまたがって進行し、労働者としての人格的従属・労働者内部の階層的従属関係・男女間の性差別という三重の人格的従属が女性にのしかかる。労働者階級はできあいの家父長制家族を歴史的出発点として性差別解消に進むが、階段の踊り場の家族が「近代的家父長制家族」であり、家族賃金を物質的基礎として、片働き家族をモデルに、男は仕事、女は家事として、家族賃金以下で雇用される女性の労働力がある。やがて家族賃金は没落し、それが労働者の生活と男女平等にあたえる影響とともに、福祉国家への展望と一体のものとなる。
討論では、家父長制が前近代的で資本が利用するとすると近代的家父長制とは何か。日本資本主義の構造分析が戦前からの発展として分析が必要。社会政策がドイツから出てきたが、日本の資本主義との関係が問題。生活給の要求は血縁を問わない家族として考えるときである。中小企業に勤めるものは共働きで、その視点で女性の低賃金パートと考えるとどうなるのか。日本で女性が工場の労働力となったのは戦時中であり、ヨーロッパは第1次大戦後、ロシアは革命後である。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』は10月10日のゼミで終わります。次のテキスト候補を推薦願います。協同組合論をという声もあり。
*森岡孝二編『格差社会の構造−グローバル資本主義の断層』桜井書店
今週末の研究大会で初お目見え。間に合いました、乞う、ご期待。

****** ゼミ日程 *******
9月26日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第47章5節 分益経営と・・  

10月10日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』6章 男女平等の・・

10月24日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第48章 三位一体的定式 

11月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
テキスト未定              

その後は 11/28(城北)、12/12(天六)、12/26(未定)

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2007年9月7日号

暑い暑い夏がまだ終わっていないような9月になりました。夏の初めから台風が2つも上陸、またまた近づいている。政治の世界も台風下の状況か。

[第534回ゼミ報告]
7月23日のゼミは、マルクス『資本論』3巻第47章「資本主義的地代の創世記」の第4節「貨幣地代」を行ないました。レポーターの到着までまず2節と3節の復習が行なわれました。貨幣地代は労働地代、生産物地代から形態的に転化した。直接的生産者が土地所有者に生産物ではなく生産物の価格を支払う。土地とは異なる労働諸条件を所有する生産者、商品生産や貨幣流通が発展していること、労働の社会的生産力が一定程度発展していることが前提となる。貨幣地代は不払剰余労働の最後の形態であり、利潤の制限となる。貨幣地代の発展と共に資本主義的生産様式の形態として、資本主義的借地農業経営者が支払うものとなる。平均利潤と生産価格は農村地帯の外部で、都市商業と製造業の県内で形成され、農業の利潤は均衡化の外となる。資本主義的借地農業経営者の生産物の価格は平均利潤とそれを越える超過分である地代を含まれている。農耕への自立的・指導的な資本参加は暫時的・特殊な生産部門(羊毛工業)から行なわれる。資本主義的な生産は差額地代を払える地所を占領して散発的に始まる。土地生産物の価格は生産の改良と生産費によって引き下げが行なわれる。生産物地代から貨幣地代に転化することで、資本還元された地代としての土地の価格ができてくる。都市の貨幣所有者は土地所有者として土地を賃貸し、資本の利子の形態で地代を取得する。
討論では、「進化」、「発展」の関係はどうか、「進歩」は前進であり、「転化」はどうなる。ローマ帝政では、貨幣地代から現物地代に逆戻りしたのは、貨幣経済の未発達による。地代が利潤取得にとって制限になっていることが重要である。都市が経済的に農村を搾取するとは、中世・封建制のもとでの農村と都市との政治的搾取ではないか。イギリスでは本当に借地農業者が出現したのか、独立自営農民の問題も含めて。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*7月23日のゼミでは5節を残しましたので、次回に繰り延べました。
*出版プロジェクトは校了し、9月28日刊行予定、乞う、ご期待。
森岡孝二編『格差社会の構造−グローバル資本主義の断層』桜井書店

****** ゼミ日程 *******
9月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』5章 ジェンダー視点の・

9月26日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第47章5節 分益経営と・・  

10月10日(水)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』6章 男女平等の・・

10月24日(水)午後6時半〜9時 場所未定
マルクス『資本論』3巻第48章 三位一体的定式 報告者未定

その後は 11/14、11/28、12/12、12/26

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2007年7月20日号

またまた新潟で地震。忘れた頃ではなく復興覚めやらぬ中、多くの古い住宅が瓦の重さでつぶれ、亡くなった方のほとんどが高齢者。

[第533回ゼミ報告]
7月9日のゼミは、二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』第4章「家事労働とサービス労働」を行ないました。はじめに「経済学とジェンダー論の不幸な別離」といい、支配的なジェンダー論が家事労働の無償性・近代家父長制の基盤の問題で家事労働の将来像に悪影響であるという。まず、労働を物質代謝労働と精神代謝労働に分け、前者を物を対象とした労働、後者を人間を対象とした労働である。特に後者は言語的コミュニケーションに媒介されている。コミュニケーション関係は対象人格に変革的作用を及ぼすと同時に、働きかけた主体そのものを同時に変革する。物質的生産労働は生産的労働ではなく、精神代謝労働がサービス労働であり、サービス労働は非生産的労働ではない。サービス労働とは対人サービスを基本としたものでその給付と享受に同時一体性がある。また物質代謝労働に根ざす派生的サービス労働があり、事物のなかに客体化される用役―仕立て職人、園芸職人がある。さらに情報生産物のように精神代謝労働から物質代謝労働が派生する。結局、生産的/非生産的労働の区別と物質的生産労働/対人サービス労働の区別は違った次元の問題である。生産と消費の関係では、生産は社会単位、社会形態を媒介にしているが、消費は個人単位である。生産力の発展により一体であった生産と消費は生産が分離していく。結局、生産的労働とは価値を生む労働であり、使用価値だけを生む労働は不生産的労働となる。家事は消費の世界に属することから最初から無償労働であり、抽象的労働に還元されない。家事労働で特に精神代謝労働的性格を持つことが重要である。消費の独立性は企業から独立した時間と空間が基礎である。
討論では、情報生産物をもっと区別すべきで、書物・絵画・画集などをどうするか。消費を個人的というか、そこになぜ家族を持ってくるのか。家電に対して個電という。サービス労働論・生産的労働論の論点をうまくまとめている。コミュニケーションで愛は家族だけのものか。

*次回の会場は関目・城北学習センターです。お間違いのないように。
*出版プロジェクトは初稿の校正を終わり、いろいろ9月出版となります。森岡孝二編『格差社会の構造−グローバル資本主義の断層』桜井書店
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっていました。お礼。

****** ゼミ日程 *******
7月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章4・5節 資本主義的・
9月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』5章 ジェンダー視点の・

9月26日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第48章 三位一体的定式  

10月10日(水)午後6時半〜9時 場所未定
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』6章 男女平等の・・

その後は 10/24、11/14、11/28

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2007年7月6日号

あいもかわらぬ大臣の不見識な発言。すぐに辞任とは選挙対策であることはみんなが分かっている。もし選挙がなければ、居直りか。

[第532回ゼミ報告]
6月25日のゼミはマルクス『資本論』3巻第47章「資本主義的地代の生成」の1節「緒論」、2節「労働地代」、3節「生産物地代」を行ないました。47章では、資本主義的生産様式に先行する旧土地所有形態が取り上げられているが、資本主義的地代分析の視点が貫かれている。歴史的性格ももった旧土地所有形態の経済的諸関係を考察することは意図ではない。地代を取り扱うことの困難は、平均利潤を越える農業利潤の超過分を説明することであるが、平均利潤そのものは資本主義的生産様式が確立されていなければならない。そのような段階に達していない社会形態では近代的な地代は問題とならない。そのような地代の性質について、それは社会的関係からではなく土地から生じるという概観が生まれる。地代の本源的形態は、労働地代、生産物地代、貨幣地代であり、過渡的な形態として分割農制地代、分割所有での地代、賦役に転化される地代がある。それに対して資本主義的地代は差額地代、絶対地代、独占地代がある。労働地代では、領主のために無償で労働する形態の地代であり、地代と剰余価値は同じであり、地代が不払剰余労働そのものとして現れる。名目上の土地所有者のための剰余労働は経済外的強制によって強奪される。アジアでは土地所有者=主権が私的所有者ではなく、国家である。労働地代は地代の最も簡単で最も本源的形態である。これに対して生産物地代は労働地代の単なる転化形態にすぎなく、その本質を変えるものではない。生産物地代への前提として、直接生産者のより高い文化、労働・社会一般のより高い発展段階となり、直接的強制に替わる諸関係の力―鞭に代わる法的規定が経済外的強制となる。討論では、アジアとヨーロッパとの違いは生産関係の違いである。地代の本源的形態を複数でみるのか、単数なのか。アジア的様式については、奴隷制と封建制の区別があいまいになる。特に、日本に強化な国家はあったのか。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*出版プロジェクトはようやく初稿の段階に入りました。執筆者の方は、桜井書店へ送る校正稿のコピーを森岡先生にも送ってください。
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっています。よろしく。

****** ゼミ日程 *******
7月9日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』4章 家事労働と・・

7月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章4・5節 資本主義的・

9月12日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』5・6章     

9月26日(水)午後6時半〜9時 場所未定
マルクス『資本論』3巻第48章 三位一体的定式   

その後は 10/10、10/24、11/14

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2007年6月22日号

まだまだ底が見えない年金問題。国の年金制度を信頼していない人が76%にも上る、特に若者に高いと。これまでも信頼できる国であったのか。

[第531回ゼミ報告]
6月11日のゼミは、二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』の第3章「資本主義のもとでの近代家族と労働者家族」を行ないました。ジェンダー・エクィティの達成には、1)男性による女性支配、2)男女間の人格的差別、3)資本による女性支配、4)資本主義的性差別の4つが、現代日本の女性解放にとっての問題である。前の2つを「家父長制的性支配・差別」とし、後2つを「資本主義的性支配・差別」として、その関係をこの章では取り上げる。まず「家父長制的」に反対しつつ「資本主義的」には過小評価するものがある。家父長制は資本主義的に先行し、それを丸呑みするように資本主義がすすむ。そのうち労働力の商品化では家父長制と衝突せざるをえない。一方での労資間における自由・平等な労働力の売買契約と、他方での家父長による妻子の奴隷商人的な販売とは矛盾する事態である。家父長制的性支配・差別から資本主義的性支配・差別への転換が進み始める。そこで、資本の論理は、男女間の属性的差異には無関心であり、中立的である。資本のもとへの労働の実質的包摂段階になると、男女の労働能力に投影する属性的差異から資本は自由になり、男女賃労働者を無差別・無制限に支配するようになる。資本は女性を賃労働者から排除することなく、むしろ逆に男女無差別に賃労働を拡大し、自らの支配下に置こうとする。資本主義のもとでの近代家父長制の継承・再編ではなく、資本主義での性支配・差別は家父長制性支配・差別と衝突するところからでてくるものである。また、性支配の根拠を性分業、つまり女性の生命の生殖=再生産役割を取り上げることは、女性=不自由労働者説とするが、資本主義はすべて奴隷制と対立する。資本主義は労働力の出自がいかなる状態におかれていたものであろうと、ひとたび労働市場にあらわれた者は、無理にも「二重の意味での自由」のもとに組み伏す役割をもっている。資本主義的性支配・差別を正面にすえることが必要である。これまで論者は基本的に片働き労働者家族を標準モデルに想定したものであり、資本主義は共働き化を必然化する傾向のものである。討論にいたる時間がなくなった。

*次回の会場は関目・城北学習センターです。お間違いのないように。
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっています。よろしく。

****** ゼミ日程 *******
6月25日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章1節〜3節 資本主義的・

7月9日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』4章 家事労働と・

7月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章4・5節 資本主義的・

9月12日(水)午後6時半〜9時 場所未定
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』5・6章     
その後は 9/26、10/10、10/24

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2007年6月8日号

昔、えらそうな会計検査院の担当者から年金の加入者漏れを指摘され、ぺこぺこする社会保険事務所の職員からはきついお言葉と追徴が来たことを思い出した。どこかに消えた年金、国による振り込め詐欺とまで言われるとは。

[第530回ゼミ報告]
5月28日のゼミは、まず最初にマルクス『資本論』3巻第45章「絶対地代」の続きを行ないました。第45章で農業資本主義の発展の見地から「土地所有は障壁」と述べ、土地所有の廃止に論及している。さらに人間の再生産・環境の見地から、土地の排他的独占所有の不合理性へと論説をつないでいく。続いて第46章「建築地地代。鉱山地代。土地価格」を高島さんの報告で行ないました。住居の需要の増大だけでなく固定資本の発展も建築地地代を増大させる。土地所有はその貢納を要求する。99カ年の賃貸契約満了時にその上にある建築物とともに土地所有者に返される。鉱山地代は農耕地代とまったく同様に決定される。土地所有は地球の一定部分を私的に専有し他人を排除する。独占価格が地代を創造するとは良質のブドウ畑の場合、地代が独占価格を創造するとは穀物が生産価格以上に売られる場合。社会の剰余価値の一部分を地代として取得するのは、地球に一部分を所有し、資本還元された地代が土地価格として現れ、一般物件のように売買されるが、これは不合理なカテゴリーである。独占価格とは生産価格によって規定される価格にかかわりなく、買い手たちの購買欲と支払い能力によってのみ規定される価格を意味する。土地所有の独占は資本主義的生産様式の歴史的前提であり、その恒常的基礎である。土地価格と地代の関係を、土地価格の騰貴と地代の騰貴との関係で説くが、土地価格の騰貴からただちに地代の増加を推論することはできないし、地代の増加から土地生産物の増加を推論することはできない。討論では、地代と借地料の違いが問題。日本の労働力が高コスト構造であるということには、労働者における住宅部分でのしわ寄せが大きい。それは土地価格が高いことに起因している。ここで低賃金構造に転換しようとする財界の動きとの関連で見る必要がある。大地は減価しないということ、何度でも使うことができるという特徴があるが、資本主義のもとではそのまま通用するといえない。独占地代について議論しあった。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっています。よろしく。

****** ゼミ日程 *******
6月11日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』3章 近代家族と・・

6月25日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章1節〜3節 資本主義的・

7月9日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』4章 家事労働と・・ 

7月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章4・5節 資本主義的・

その後は夏休み 再開は9/12(水)から

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2007年5月25日号

突然講師控室に放送が流れ、二週間休講となった。ニュースで知っていてもまさかそれにまきこまれるとは思ってもみなかった、麻疹(はしか)の流行

[第529回ゼミ報告]
5月14日のゼミは二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』の第1章「現代日本のジェンダーをめぐる諸潮流と対抗関係」、第2章「ジェンダー論の基礎的概念と近代家父長制」をで行ないました。新自由主義が横行する中、資本主義的性差別を克服するための課題は、ジェンダー問題の構図、支配的ジェンダー論の再検討、概念整理、福祉国家の展望が大切という。ジェンダーは生物学的な性差ではなく歴史社会的な性差であり、性的差異と性的差別を含んでいる。したがって目標はジェンダーを廃止することではなく、ジェンダー・エクィティ、男女平等の実現を目指すものである。ジェンダー論にはエクィティ派、新自由主義派、バックラッシュ派が三角関係をなしている。1990年末から性別役割分担家族を擁護するバッククラッシュ派が新自由主義派と手を組み攻勢をかけている。ラディカル派は近代家父長制の概念を提示して家族賃金、無償の家事労働をあぶりだして、性差別を性支配の問題として捉える。しかしながら、資本主義は労働者の「人格」と「能力」を分離し、経済外的な差別と経済的差別を分離する。したがって、資本主義での差別は人格的差別の性格を帯びず、性に対して中立である。ただ賃労働の支配のために労働者内部に差別関係として男女の性差を持ち込んで積極的に利用するのである。その性差別は「直接差別」から「間接差別」に移行する。いずれにせよ資本・賃労働の階級関係の視点から両性の「分断的格差」を見ること、さらにマルクスからセンにつながる平等が重要であるという。討論では、三つの派でのトライアングルの捉え方でいいのか、新自由主義は形式論として経済人の見方であり、資本は何でも都合のいいものを利用するのではないか。それが本質ではないか。性差別に対して資本が中立であるというが、資本そのものに支配としての性差別を持っているのではないか。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*次回のゼミで、高橋さんが少し遅く来られるため、それまで高橋さんの前回の報告を討論します。
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっています。よろしく。

****** ゼミ日程 *******
5月28日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第46章 建築地地代。鉱山地代。

6月11日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』3章 近代家族と・・

6月25日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章 資本主義的地代の創世記 

7月9日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』4章 家事労働と・・ 

後 7/23(月・城北学習センター)

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2007年5月11日号

人はそれでも恐怖を体験したくて乗る。体験ではなく現実となるとは。

[第528回ゼミ報告]
4月23日のゼミは、マルクス『資本論』3巻第45章「絶対地代」」を行ないました。差額地代については、最劣等地は地代を払わないという前提から出発した。つまり資本家的借地農業者にとっては市場価格+平均利潤で耕作できるということであり、地代を払えなくても平均利潤を得ることができるということであっても、その土地を無条件で自由処分できるということではない。土地を「無償提供」する博愛的な土地所有者はいない。この前提は土地所有の捨象(廃止)が含まれている。土地所有の存在こそ土地への資本投下・資本増殖の制限をなしている。土地所有の独占の存在が超過利潤を土地所有者に引き渡されて地代に転化することになる。地代を払わずに資本が土地に投下されるのは、土地所有者が資本家であるか、一括された賃借地のなかに無地代の土地が含まれるか、借地契約の継続で同じ土地で平均利潤しかでない追加投資の場合である。しかし土地所有者は超過分を受け取ることができるまで土地の経済的利用を許さない。豊度の格差から導き出されえない最劣等地の地代というのは土地生産物の価格として独占価格である。農産物の価値が生産価格以上であるということから、差額地代と概念的に区別される絶対地代が存在する。工業生産の場合は生産部門間の競争を通じて資本が平均化され、剰余価値の平均利潤への均衡化が行なわれる。しかし、土地所有が設ける制限のために、市場価格は生産価格を超える超過分として地代を払う点まで上がらざるをえない。土地所有のもつ資本投下の絶対的制限作用は差額地代のもたらさない劣等地でも地代無しでは土地利用を許さない。絶対地代の本質は、いろいろな生産部面でそれぞれの平均構成の相違に応じて同じ剰余価値率のもとで、違った量の剰余価値を生産するところにある。ただ農業資本の構成が社会的資本の構成と同じか高くなれば絶対地代はなくなる。討論では、工業での平均化と農業での制限、絶対地代で騰貴するならば、価値と生産価格の関係はどうなるのか、虚偽の社会的価値は妥当なのか。土地所有の制限は絶対地代だけでなく差額地代でもある。農業における有機的構成低位の仮定と農産物の価値との関係について。

*次回の会場はいつもの天六・大阪市立住まい情報センターです。
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっています。よろしく。

****** ゼミ日程 *******
5月14日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』1・2章     

5月28日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第46章 建築地地代。鉱山地代。

6月11日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』3・4章      

6月25日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第47章 資本主義的地代の創世記 

後 7/9(月・天六)、7/23(月・城北学習センター)、

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2007年4月20日号

午後8時半の品川駅、西へ走る「のぞみ」を待つ人の大部分が出張帰りとおぼしき人達、上役と若者の社員、女性社員も見かける。東京でみたひとコマ。

[第527回ゼミ報告]
4月9日のゼミは日経連『希望の国、日本ビジョン2007』の第3章の後半と4・5章を行ないました。道州制の導入では財政赤字を負担と受益関係のあいまいさから平成の廃藩置県を行なうべきとし、労働市場改革ではワーク・ライフ・バランスの実現で多様かつ柔軟な働き方を実現するとし、外国人労働者の受入まで書いている。少子化対策は同様にワーク・ライフ・バランスを重視し、教育の再生と公徳心の涵養をはかる。すなわち、「志と心」「行動力」「知力」をあげ、愛国心を育てる必要があるという。CSRと企業倫理の徹底から、政治への積極的参画をし、憲法改革を国際貢献へのためとする。今後5年間に行なう5つの改革(成長エンジン、アジアとともに、政府の役割、道州制と労働市場改革、教育の再生と憲法改革)をあげる。2015年の日本の経済・産業構造は「希望の国」の実現から、精神面を含めた豊かな生活、開かれた機会と公正競争に支えられた社会、世界から尊敬され親しみをもたれる国を目標とし、経済成長は2.2%とし、国民所得は30%増え、実質の産出額は年平均の伸び率は2%となり、製造業・サービス産業が日本経済の成長を力強く牽引し、非製造業がしっかりと下支えする産業構造となっている。討論では、少子化対策に社会保障の指摘が抜けている。ワーク・ライフ・バランスという場合は労働時間が問題であるが、日本の長時間労働には触れていない。欧米では、長期休暇が少子化対策の有効な手段となっていて、男性の育児参加への視点が抜けている。米国の出生率が抜き出ているが、移民国家とヒスパニックによっている。人口が減った社会というものを想定できないのであろうか。CSRの展開では自発的な政治寄付がCSRの一環であるというが、それでいいのだろうか。またCSRというのであれば、そこで働く労働者に対する社会的な責任はどうか。株主・消費者・地域をあげているが、労働者が忘れられている。唐突に憲法改革が出てくるがなぜそこまでいうのか。新自由主義と新復古主義・超国家
主義との対立がある。以前の財界ビジョンと比べ、目標とする年数は短くなっている。

*次回の会場は関目・城北学習センターです。お間違いのないように。
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっています。よろしく。

****** ゼミ日程 *******
4月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第45章 絶対地代       

5月14日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』1・2章      

5月28日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第46章 建築地地代。鉱山地代。

6月11日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』3・4章      

後 6/25(月・城北学習センター)、7/9(月・天六)

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2007年4月6日号

桜が咲くにはまだ早く、雨にも降られながら、春のハイキングを強行。雨上がりの鞍馬街道を登り、はるか比叡の山を借景に石庭をながめた一日。

[第526回ゼミ報告]
3月28日のゼミはマルクス『資本論』3巻第44章「最劣等耕地にも生じる差額地代」をで行ないました。穀物需要の増加によって資本が順次的投下されると最劣等地にも地代を生じる。それには追加の生産によって規制的市場価格を超える市場価格の騰貴が必要である。劣等な土地が耕作圏に入らず最劣等地に地代が成立するのは、追加生産物でより騰貴した生産価格との差額によって地代が成立する。また土地Aより最下位地の耕作で土地Aに地代が成立する。さらに、価格が不変のもとで追加資本投下が超過生産物を生み出す場合と、土地Aでの順次的な資本投下の生産性が減少する場合も地代が生じる。だたし需要により生産の増加が必要になっていることが前提である。追加資本投下の生産力が増加するばあいには通常は規制的生産価格が低下するが、それは農業に一般的革命が起こる場合である。土地改良が一部分でしか行なわれず、超過利潤をもたらすが、土地所有者はそれを地代に転化させて、地代として固定しようとし、平均価格への均衡化を妨げる。追加資本投下の生産力が減少する場合は、地代は2次投下でもたらすことになるが、土地所有者は地代なしで借地農業経営者に貸すことはない。資本投下の超過利潤の順次的減少は生産価格が不変の場合は地代を増加させ、生産価格が低下する場合でさえも地代を増加させうる。自然の生産力は価格決定には入らないが、差額地代は土地に合体された資本の単なる利子として認識されるようになる。討論では、マルクスとエンゲルスの計算の違いはどうか。どれを規制的生産価格とするかで異なる。なぜ農業では供給よりも需要が高いと前提されているのか、農業生産力が弱く、食糧供給がまだ弱かった。したがってスミスもマルサスも食糧問題を扱っている。農業経営者と土地所有者との関係がここでは一番の問題で、貸す土地には必ず地代が成立するということがある。技術論はどうか。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*高田の都合で、7月まで月曜日に変更となっています。よろしく。
*3月24日の春のハイキングには、5名参加で、上賀茂神社から木野駅まで歩きました。

****** ゼミ日程 *******
4月9日(月)午後6時半〜9時  天六・大阪市立住まい情報センター
日経連『希望の国、日本ビジョン2007』3・4・5章 

4月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第45章 絶対地代      

5月14日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』1・2章      

5月28日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第46章 建築地地代。鉱山地代。

後 6/11(月・天六)、6/25(月・城北学習センター)

[一番上に]


2007年3月23日号

新ことわざ:「手も足も出ない」は方法がないとき、「足が出る」は使いすぎたとき、「足が出ない」は胴体着陸のとき。昔のDHC機は固定脚だったな。

[第525回ゼミ報告]
3月14日のゼミは日経連『希望の国、日本ビジョン2007』1章・2章・3章の3までを害重視派と成長重視派を対比し、基本的に成長重視を選択する。グローバル化の進展と人口減少・少子高齢化の進行で、めざす国の形は自主自立の精神であり、開かれた機会と公正な競争の社会とは結果の平等を与えるものではないとし、日米同盟を機軸にして国際的な戦略を行なって国益を増進し、世界から尊敬され親しみを持つ国になるという。そのような「希望の国」の実現のために、新しい成長エンジンとして、イノベーション競争力の確保の鍵として、高度な人材の確保と生産性向上・労働政策改革を挙げ、需要の創出・拡大ではアジアに求める。WTOやFTA/EPAを促進して「東アジア共同体」を形成していくという。さらに政府の役割を最小限のものにして自助による見直しをし、消費税の引き上げと法人税率の引き下げを唱える。討論では、新自由主義ではあるが、新ナショナリズムが見える。アジアとの関係を重視しているが、それと日米同盟の機軸は相反しないか。結局、東アジア共同体ではバスに乗り遅れるなということで、アメリカのくさびの代理人となる。それで東アジアの国々が価値観を同じにするといえるのか。中国包囲網を考えていて、対中国が問題の根幹にある。人口減少社会であることが社会の存続不可能という考えは正しいのであろうか。これまで高度成長の中で人口が増え続ける社会を想定していたが、労働人口減少を前提とした社会のあり方を考える必要がある。イノベーション改革一辺倒の政策となり、エネルギーでは原子力を中心にすえていることに疑問がある。

*次回の会場は中之島・中央公会堂第6会議室です。お間違いないように。
*5月14日のゼミからテキストは二宮 厚美『ジェンダー平等の経済学』新日本出版を取り上げます。
*恒例の春の花見ハイキングは、3月24日(土)10時半、叡山電鉄出町柳駅集合、上賀茂神社→深泥池→鞍馬街道→円通寺→妙満寺→木野駅。

****** ゼミ日程 *******
3月28日(水)午後6時半〜9時 中之島・中央公会堂第6会議室:2階
マルクス『資本論』3巻第44章 最劣等地差額地代

4月9日(月)午後6時半〜9時  天六・大阪市立住まい情報センター
日経連『希望の国、日本ビジョン2007』3・4・5章 

4月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第45章 絶対地代       

5月14日(月)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
二宮厚美『ジェンダー平等の経済学』1・2章      
後 5/28(月・天六)、6/11(月・天六)、6/25(月)

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2007年3月9日号

啓蟄とは冬篭りから虫が出てくるとか。暖冬で春の日和でもう早くに虫は出て来ているかも。街は花粉症が早くも蔓延。マスクをして歩く人達。

[第524回ゼミ報告]
2月28日のゼミはマルクス『資本論』3巻第42章「差額地代U−第2例 生産価格が低下する場合」と43章「差額地代U−第3例 生産価格が騰貴する場合。諸結果」を行ないました。マルクスは様々な表を作って生産価格の影響による地代の変化を説いている。諸地代の列は規制的土地を0点とした豊度の相違の列に正確に比例する。絶対的収益ではなく、収穫の諸格差だけが地代にとっては規定的である。超過利潤の形成は異なる道を経て行なわれ、差額地代Tでは差額の結果のそれ自体として区別されるが、差額地代Uでは個々の順次的な資本投下の異なる個別的生産価格が平均生産価格に均等化されることを前提としている。借地農業経営者はひとたび地代を払うようになると規制的生産価格以下でも自分の利潤から控除して地代を払う。差額地代Tおよび差額地代Uは前者が後者の基礎であるが、同時にそれらは互いに限界を画しあっているのであって、ある場合には同じ土地での資本の順次的投下が引き起こされ、またある場合は新たな追加地での並立的投下が引き起こされる。討論では、これらの表でわかるが、生産物の量と需要が一致することが前提されている。エンゲルスの表の整理はいいのか、マルクスは追加投資が極端すぎる。追加投資が続けば土地の豊度の追加と同じになる。生産技術によって生産性が違ってくる。最劣等地で資本投下して土地改良した場合、地代はそのままということはない。地代のマイナスとは資本家の持ち出しになる。地主は強い。一年で代えられる。農業資本家は本当にいたのか。第2形態は歴史的でありリカード批判である。土地の所有と資本の歴史、国家と植民地の問題、グローバル化、ケルト人、土地国有化論まで議論が続いた。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*次回3月14日のゼミのテキストは、日経連『希望の国、日本ビジョン2007』で、2回に分けて行います。続いて二宮 厚美『ジェンダー平等の経済学』新日本出版を取り上げることになっています。
*恒例の春の花見ハイキングは、3月24日(土)に行ないます。詳細は次回のゼミでコーディネイターの高橋さんの提案をもとに決めます。

****** ゼミ日程 *******
3月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
日経連『希望の国、日本ビジョン2007』1・2・3章 

3月28日(水)午後6時半〜9時 中之島・中央公会堂第6会議室:2階
マルクス『資本論』3巻第44章 最劣等地差額地代 

4月9日(月)午後6時半〜9時  天六・大阪市立住まい情報センター
日経連『希望の国、日本ビジョン2007』4・5章   

4月23日(月)午後6時半〜9時 関目・城北学習センター
マルクス『資本論』3巻第45章 絶対地代      
後 5/14(月・天六)、5/28(月・天六)

[一番上に]


2007年2月23日号

女性機械発言相が第2弾:工場労働は労働時間だけが売り物と発言。マルクス理論に賛成か。ただ経営者の正直な思いを述べただけ。時は金なり。

[第523回ゼミ報告]
2月14日のゼミは吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』の第4章「戦後日本の市民社会論の展開」の「V「市民社会派マルクス主義」と平田清明の市民社会論」と「Wマルクス主義の市民社会論」を行ないました。まず内田義彦が歴史貫通的な市民社会、資本主義的市民社会、社会主義での市民社会としてマルクス理論との接点を追求したが、主体面を強調して客体面を軽視したため市民社会史観と階級社会史観の結節が残ったという。また、個体的所有を取り上げる平田清明は市民社会と資本主義との内在的結節を目指したが、市民社会概念への過度の思い入れのため階級史観との結節を捨象する結果となった。ドイツイデオロギーを取り上げた望月清司も同様に市民間関係を重視するあまり階級間関係を軽視する傾向となった。これに対して見田石介は歴史貫通的市民社会をまったく視野にいれず、階級関係のみを強調した。それは林直道でも市民社会概念を認めたとしても重層的認識の欠如がある。また重田澄男も市民的生産様式から脱却して資本家的生産様式概念をマルクスは確定したといい、それを市民社会的関係と資本家社会的関係との関連が重なりあうととらえている。全体としていえば、吉田は何でも市民社会に引き寄せて八方美人的になっているが、古典的・正統派マルクス主義に厳しく、既成社会主義への失望と怨念が潜んでいる。
討論では、平田の個体的所有は既存の社会主義体制批判であり、その社会主義観はチトーなどの協同組合的社会主義だ。市民社会論・論はドイツイデオロギーの規定だけを大事にまもっているが、それでいいのか。重層的というのはおもしろいが、おかしい。二つの側面を二つにわけているだけ。重田氏の論が一番すっと入れるが、吉田氏と一致しなのでは。歴史貫通的というのがおかしい。初期だけでなく、マルクス自身が発展している。基礎研の市民社会論を取り上げないが。市民社会史観ではなく、「公共性」として考える必要がある。市民社会がなぜファシズムへいったのか、階級的観点が欠かせない。吉田氏自身の市民社会論が聞きたい。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*2月14日のゼミで吉田本が終わりました。次のテキストは、日経連『希望の国、日本ビジョン2007』を2回に分けて行い、続いて二宮 厚美『ジェンダー平等の経済学』新日本出版を取り上げることになりました。

****** ゼミ日程 *******
2月28日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第42・43章差額地代U・2例 

3月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
日経連『希望の国、日本ビジョン2007』1・2・3章  

3月28日(水)午後6時半〜9時 中之島・中央公会堂第6会議室:2階
マルクス『資本論』3巻第44章 最劣等地差額地代  
後 4/9(月・天六)、4/23(関目・城北学習センター)

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2007年2月9日号

思ってもないことを発言したのか、思っている事で口をすべらしたのか。政策立案者が正直に語ったことに問題の深さがある、男尊女卑と機械問題。

[第522回ゼミ報告]
1月24日のゼミは、マルクス『資本論』3巻第40章「差額地代の第二形態(差額地代U)、第41章「差額地代U−1例 生産価格が不変な場合」を行ないました。これまでは豊度を異にする等しい土地面積での生産性の違いの結果をみていたが、生産性を異にする一定額の諸資本が次々に同一地片に投下される場合には、その結果は同じであれ、なんらかの区別がつけられるか、と問題提起する。借地資本家と土地所有者との地代への転化をめぐる闘争は、長期借地契約か優位にある土地を年々解約できるかにあり、地代査定人が重要となる。人工的に高められた土地豊度と自然の豊度が区別されないからである。差額地代Uの基礎・出発点は差額地代Tであり、豊度の差異だけでなく借地経営者間の資本配分の相違が加わる。超過利潤は平均利潤にも規制的生産価格にも影響せず、需要の増加による市場価格の騰貴は最低地での超過利潤を発生させるだけである。差額地代TとUの本質的な区別は、生産価格が不変で利潤率が不変で豊度の格差が不変であっても、生産物地代と貨幣地代の大きさと土地価格は増大しうるということである。生産価格が不変ということは、市場価格が最低地に投下された資本によって規制されることである。最低地と同じ生産性のものが追加されても地代に影響せず、それぞれの豊度に応じて投下されるときには地代は資本の増加に比例してのみ増加する。しかし、費用価格の低下があれば、それは資本家に利潤をもたらすことになる。結局生産価格が不変であれば資本の追加投資は最低地より上の場所で行なわれれば地代は増加する。討論では、リカードの収穫逓減の法則を否定している。豊度について自然的豊度と経済的豊度をどのように考えるのか。地代査定人とは執事から発して次第に独立性をもった。鑑定士の出現は穀物法の廃止と関係がある。資本家は平均利潤を得るだけでOKということなのか。土地価格は20年地代から出てくる。資本家的農業を前提としているが、日本ではどうか。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*2月14日のゼミで吉田本が終わります。次のテキストを話し合って決めますので、候補あるいは推奨のテキストを持ち寄りください。候補には、二宮 厚美『ジェンダー平等の経済学』、山口定『市民社会論』、佐々木憲昭『変貌する財界―日本経団連の分析』等があがっています。

****** ゼミ日程 *******
2月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』 第4章W  
2月28日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第42・43章差額地代U・2例 
3月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
テキスト未定                   
後 3/28(中之島公会堂)、4/9(月・天六)、4/23(会場未定)

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2007年1月19日号

また1月17日が来た。震災前には震度5の災害計画した持ち得なかった神戸。それにかかわった科学者の反省の日々。労働ビックバンの震度を小さく見せるか、大きな問題として震度7以上に暴くか、経済科学者の責任は重い。

[第521回ゼミ報告]
1月10日のゼミは吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』第4章「戦後日本の市民社会論の展開」のT「戦前の「市民社会」論」、U「「近代主義」と丸山真男の市民社会論」をおこないました。まず、戦前の市民社会論をとりあげることについて、戦後の市民社会論への影響を問題視角とし、最初に福沢諭吉をとりあげ、後進国日本を近代化するための西欧化を提唱したが、その本質は天皇制絶対主義国家の存立と独立を条件とした「市民社会」化であった。それは西欧列強に伍する帝国主義国化であったことは「脱亜論」におけるアジア侵略肯定において明らかとなる。それに対して日本を天皇を中軸とする「倫理的共同体」として説こうとしたのが和辻哲郎であった。それはブルジョア的市民や市民社会に敵意を持ち、福沢諭吉の個人主義と功利主義を批判した。戦後の市民社会論として最初に論ずるのは丸山真男である。丸山はブルジョア的市民社会をただ肯定・美化するのではなく、「生産と交通」の歴史的一段階として「相対的」な進歩と捉えていた。丸山は歴史の進歩を前近代−近代―超近代における民主主義と市民社会の発展と捉えていた。それゆえ安保闘争での変革方向を国家から市民社会への転換として、市民運動におきながら階級的闘いと見ていた。それは丸山とマルクス主義との一定の連携を確認できる。しかし70年代高度成長以後、歴史意識の「古層」への観点の転換をしていった。結局丸山の民主主義=市民社会は「超歴史的カテゴリー」であった。そして丸山の主体的思想とマルクス主義の客体的思想が結節するとき、おおきな歴史的意義をもつ。討論では、福沢・和辻だけでなく自由民権運動など歴史的なトレースが必要。「意義と限界」というのは思想史としてどうか。市民社会を共同体からの離脱と考えれば、超歴史的な市民社会というのは疑問だ。人民の権利と自由がどれだけなのかの視点が必要となる。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*2月最初のゼミで吉田本が終わります。次回のゼミと次々回のゼミで次のテキストを話し合って決めますので、候補あるいは推奨のテキストを持ち寄りください。

****** ゼミ日程 *******
1月10日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』第4章T〜V

1月24日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第40・41章 差額地代U・1例 

2月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』 第4章W  
2月28日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第42章 差額地代U・2例  
後 3/14(天六)、3/28(中之島公会堂)、4/9(月・天六)

[一番上に]


2007年1月5日号

あけましておめでとうございます。今年の抱負などというものはいつも考えないたちですが、今年は「整」という字を抱負に、整理しないと立ち往生してしまう多くの物だけでなく、頭の中の整頓も切羽詰った問題です。

[第520回ゼミ報告]
12月13日のゼミは吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』の「第3章西欧における市民社会論の展開」の「W近代止揚の市民社会論−マルクス・グラムシ」と「X現代の市民社会論−アーレント・ハーバマス」を行いました。マルクスは重層的市民社会論として、ヘーゲルの労働論を批判して抽象的なものから疎外された労働を導き出し、ヘーゲルの市民社会から国家への止揚形態が両者の分離や衝突を示すことを解明した。生産と交通としての下部構造的市民社会が人間社会の展開と発展を規定し、上部構造としての市民社会が具体的形態であるという。20世紀ファシズム国家に対抗したグラムシは重層的市民社会をヘゲモニー論を機軸として現実的な方途を切り開いた。それは下部構造→イデオロギー→上部構造と拡大し、変革主体論の確立にいたる。それに対し、現代を代表する論者のひとりとしてアーレントは、古典的市民社会を理想の市民社会として古代ポリスの人間と社会を基準として近代の人間と社会を批判する。全体主義・大衆社会への批判はロシア社会主義とナチスドイツを同一視し、イデオロギー支配の忌避と保守主義に結びつき、彼女の市民社会は理念性にとどまっている。これを肯定的にみるハーバマスはコミュニケーション的行為論としての市民社会論を展開し、システム総合が社会的統合を駆逐し生活世界を植民地化しているといい、それは制度化する連帯的結合としての市民社会論であり、国家と市民社会の分離を明確にした。討論では、大衆社会を取り上げことの意味は。少数革命のレーニンに対して多数派革命のグラムシの対比。チリの問題。吉田氏は上部構造と下部構造を切りすぎるのではないか。吉田氏自身の市民社会論とは?アジア的共同体の問題。

*次回の会場は天六・大阪市立住まい情報センターです。
*出版プロジェクト執筆打上会を兼ねての忘年会を12月27日に中之島のリーガグランドホテル14階のレストラングランドスカイで、バイキング料理を楽しみながら談笑のひと時を過ごしました。

****** ゼミ日程 *******
1月10日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』第4章T〜V報

1月24日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
マルクス『資本論』3巻第40・41章 差額地代U・1例 

2月14日(水)午後6時半〜9時 天六・大阪市立住まい情報センター
吉田傑俊『市民社会論 その理論と歴史』 第4章W  
後 2/28(天六)、3/14、3/28

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